表題番号:1998A-139 日付:2002/02/25
研究課題画像処理向け組込みプロセッサのハードウェア/ソフトウェア協調設計手法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 戸川 望
研究成果概要
 画像処理向け組込みプロセッサとは、画像処理専用システムLSIに集積されたプロセッサである。画像処理向け組込みプロセッサは、従来の汎用途マイクロプロセッサに見られない数多くの画像処理専用ユニットを有しており、いかにこれらを組み合わせてプロセッサを構築していくかが最大の焦点となる。しかも最適設計を得るには、数多くのプロセッサアーキテクチャの候補を列挙し、プロセッサ上でアプリケーションソフトウェアを動作させる必要がある。即ち、画像処理向け組込みプロセッサのハードウェアとその上で動作するソフトウェアとを同時に自動設計する手法(ハードウェア/ソフトウェア協調設計手法)が求められる。これまで、アーキテクチャ候補列挙に基づくハードウェア自動設計手法に関する研究を行ってきた。計算機を用いてより広範囲のアーキテクチャの解空間を探索することにより、最適なアーキテクチャ設計を実現している。本研究は、この概念を画像処理向け組込みプロセッサのハードウェア/ソフトウェア協調設計に拡張することを目指したものである。
 以上のような背景から、本研究では、動画像あるいは高精細画像の符号化・復号化、特徴抽出、強調復元といった画像処理アプリケーションを対象に、これらのアプリケーションソフトウェア専用のプロセッサを計算機によって自動設計する手法を構築した。構築された画像処理向け組込みプロセッサの自動設計手法は、次の手順に基づく。(1) まず、プロセッサに対して想定される全てのハードウェアユニット(積和器、アドレッシングユニット、ハードウェアルーピング回路、複数レジスタファイル)を付加したプロセッサモデルを定義し、このモデル上で与えられたアプリケーションプログラムをコンパイルする。この結果得られたアセンブリコードを実行するプロセッサハードウェアは、ハードウェアコストが増加するが実行時間は最短となる。(2) 続いて、ハードウェアユニットによる実現部の一部を徐々にソフトウェアによって代替する。得られるアセンブリコードは、徐々に実行時間が長くなるが、プロセッサハードウェアに必要とされる面積は小さくなる。(3) (2)によって得られたプロセッサ構成から、ハードウェア記述言語VHDLによって記述されたレジスタトランスファレベル(RTレベル)でのプロセッサ記述を合成する。得られたプロセッサ記述は、市販の論理合成ツールで論理合成可能であり、構築した手法を用いることで、極めて高速かつ低コストに画像処理向け組込みプロセッサを得ることができた。