表題番号:1998A-121 日付:2002/02/25
研究課題鋼構造物の地震時動的応答解析プログラムの作成に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 依田 照彦
研究成果概要
 本研究では、複数の局部座屈を考慮できる、箱形無剛断面骨組構造物の静的載荷に対する簡易解析手法を拡張し、補剛材を有する断面についての簡易解析法を具体的に示すことが目的である。解析では、応力-ひずみ関係に負勾配を含む非線形関係を仮定し、一次元有限要素解析手法を用い、換算断面曲げ剛性と軸ひずみ分布を得るために積層構造として解析を行った。また有限要素解析の適用にあたっては、計算時間の短縮と局部座屈発生時の挙動を分かり易くするために、一次元モデルにおける初期応力法を用いて計算過程の簡易化を目指した。数値計算例では、箱形断面の鋼製橋脚モデルを用いて、実験結果および既往の計算結果と比較し、その妥当性を確認した。
 得られた結果をまとめると以下のようになる。
(1) 本研究で提案した解析法による地震時保有水平耐力の計算結果は、対応する単柱の実験結果および有限要素法による計算結果とほぼ一致し、本解析における局部座屈計算の仮定が妥当であることが示された。
(2) 計算に要する時間は、単柱、門形ラーメンともにパソコンを用いて数秒程度であり、局部座屈を考慮した鋼製橋脚の解析方法として、本解析法は非常に簡易である。
(3) 門形ラーメンの例などのように複数の箇所での局部座屈発生を考慮するような場合には、局部座屈成長時に局部座屈発生部以外でのひずみ増分を無視することはできず、無視した場合には危険側の計算結果を与えることに注意する必要がある。
(4) ラーメンのような不静定構造物の場合、荷重―モーメント関係が複雑になるために、モーメント―曲率近似曲線を解析に用いる時には、計算の増分量に注意を要する。