表題番号:1998A-103 日付:2002/02/25
研究課題負債と資本の区分の理論的研究と実態調査
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 大塚 宗春
研究成果概要
 金融の自由化および国際化という金融環境の変化は、先物取引、オプション取引、スワップ取引といった新たな金融商品・金融取引を産み出しており、近年急速に発展・拡大してきている。企業は普通株式や普通社債といった従来の証券にオプションを組み合わせた新しい金融商品を発行するようになってきている。こうした金融環境の変化が企業に及ぼすインパクトの一つに、会計的にみてその発行が負債と資本の境界線上にある金融商品が多く現れてきたことがあげられる。本研究では、負債と資本の境界線上であるグレーゾーンにあるといわれる金融商品が負債であるか資本であるかという問題を通じて負債と資本の区分の問題を研究した。特に、オプションを組み込んだ社債である転換社債と新株引受権付社債の会計を米国の文献を中心に検討した。
 米国の財務会計基準審議会(FASB)が1990年に公表した討議資料「負債と資本の区分とその両方の特徴を持つ金融商品の会計」を中心に研究を進めた。新株引受権付社債の新株引受権の会計についてみると、米国では新株引受権の発行時に新株引受権を拠出資本に含めていて、新株引受権が行使されなくてもそのまま資本である。これに対し、日本では発行時に仮勘定として負債に計上し、新株引受権が行使されたときには資本に、行使されなかったときには利益に振り替える。なぜこのような違いが生じるのか。その一つの理由は、米国では資産・負債の定義からはじめて、負債の定義に当てはまらないものは資本であるという論理をとっている。これに対し、わが国では負債の定義が示されていなく、商法では資本と資本準備金の内容を明らかにしているため、資本に当てはまらないのは負債であるという論理をとっているところにある。しかしこの問題は単に定義の該当しないからということだけではなく負債の時価評価の問題も絡んでいる立場で検討した。