表題番号:1998A-080 日付:2002/02/25
研究課題分離した結び目のバンド和
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 鈴木 晋一
研究成果概要
 今年度の研究では、目標とした定理の証明にまでは至らなかったが、以下のような成果が得られた。平面的グラフGの「正則射影図」とは、Gから2次元平面への連続写像による像で、多重点は高々有限個の2重点のみを持つものを言う。ただし、頂点の像は2重点にはならないものとする。正則射影図の各2重点に「上か下か」の情報を与えると、これはGの3次元空間への埋め込みを表示する。3次元空間に埋め込まれた平面的グラフが「平凡型」であるとは、それが全同位によって2次元平面上に移る場合を言う。さらに、平面的グラフの正則射影図が「非平凡」であるとは、その2重点にいかなる「上か下か」の情報を与えても、平凡型の埋め込みが得られない場合を言う。平面的グラフGが「自明化可能」であるとは、Gが非平凡な正則射影図を持たない場合を言う。
 絡み目を有限個のサイクルの非交和の3次元空間への埋め込みと解釈すると、結び目理論では、有限個のサイクルの非交和は自明化可能であることがよく知られている。谷山公規氏は自明化不可能な平面的グラフが存在することを示し、また「2焦点グラフ」と名付けられた自明化可能な平面的グラフの類を構成した。今回の研究では、谷山氏とは別の「3線蜘蛛の巣グラフ」と名付けた自明化可能な平面的グラフの類を構成した。さらに、これと谷山氏の結果を用いて、自明化可能性に関する臨界グラフを7個確定することができた。臨界グラフをすべて求める問題が残されている。
 これらの成果は、「On a class of trivializable graphs」の表題で英文論文誌に投稿準備中である。