表題番号:1998A-078 日付:2002/02/25
研究課題光合成生物の酸化的ストレス感受性部位と防御機構
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 櫻井 英博
研究成果概要
 緑藻Chlamydomonas reinhadtiiの抗酸化ストレス酵素系の培養条件に対する応答について研究した。
 培養時の気相が空気のもの(低CO2細胞)と空気に1% CO2を添加したもの(高CO2細胞)とを比較すると、防御系酵素のうちAPX, SOD, CAT, GRの活性は、低CO2細胞の方が高かった。特にAPXは、前者の方が後者よりも10倍以上活性が高かった。この結果は、Sueltemeyer et al. (1993)の結果と多くの部分で一致しているが、彼らはGRに関してはわれわれと異なり、前者の方が低いと報告している。
 Chlamydomonasは、少なくとも4種のSODアイゾザイムを持っており、その3つはMn-SODで、1つはFe-SODである。高CO2細胞を50x10-6 Mのパラコート(PQ)存在下で25時間培養すると、SOD活性が低下した。SODアイソザイムそれぞれの活性を電気泳動後の活性染色により分離定量したところ、Fe-SOD活性は著しく低下したのに対し、Mn-SOD活性は低下しないことがわかった。低CO2細胞では、このようなSODの活性低下は見られなかった。Fe-SODはH2O2に対して感受性であるのに対し、Mn-SODは非感受性である。これらの結果より、PQ処理によって細胞内H2O2濃度が上昇したが、低CO2細胞はこれに対抗できたのに対し、防御系酵素の活性が低い高CO2細胞はこれに対抗できなかったと結論される。