表題番号:1998A-074 日付:2002/02/25
研究課題非線形景気循環モデルの挙動にノイズが及ぼす影響の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 稲葉 敏夫
研究成果概要
 3次元非線形差分型の開放系カルドア型景気循環モデルを分析の対象にした。変動相場制の下で国際資本移動の流動性の程度を表すパラメータにノイズ摂動を加える、パラメトリックノイズを中心に数値計算を行い、そのことによって、ノイズがモデルの動学的挙動に与える影響を調べた。その結果,以下の知見が得られた。(1)狭い周期の窓においては、ノイズは安定な周期よりもむしろ背後に隠された,不安定なカオス的アトラクターを顕在化させることがある。背後の隠されたアトラクターの顕在化は,ノイズのサイズがかなり小さくてもかなりの頻度で起こることがわかった。このことは,ノイズは単に周期性を弱めるに過ぎないとの従来の主張が必ずしも正しくはないことを意味する。(2)所得調整速度を表すパラメータを分岐パラメータとして,パラメータ値を増加させたとき,ある値を超えると外国為替相場が激しく変動する,バースト減少が見られる。しかし,ノイズを加えることによってバースト現象が消え,為替相場の変動が沈静化することがありうるのをやはり数値例によって示した。これは恐らくは望ましい状況であろう。以上の結果から,ノイズの働きについては従来の通説を見なおす必要があることがわかった。