表題番号:1998A-057 日付:2002/02/25
研究課題中国東北およびモンゴルにおける清朝の統治と民族集団の再形成の関係についての研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 専任講師 柳澤 明
研究成果概要
本研究は,申請者が従来から継続的に取り組んできた清朝統治下の中国東北における諸民族集団の再形成のプロセスの解明を,隣接するモンゴルの状況との比較をも視野に入れつつ,より全面的に進めることを目的とするものであった。そのため,計画通り1998年7月から8月にかけて中国に出張し,主として北京の中国第一歴史档案館において清朝中央政府の文書史料(档案)の調査を行った。
 実際に閲覧・調査したのは,1)1680~90年代の「礼科史書」と「兵科史書」と,2)1720~30年代の「朱批奏摺」で,特に1)に重点をおいた。
 これは,1680~90年代が,ロシア帝国およびジュンガル部の東進によって東北とモンゴルの諸民族の分布・帰属に大きな変動が見られた時期に当たり,現在に至る民族構成の基礎が形成される画期の1つであったの認識に基づく。
「史書」とは中央・地方官が皇帝に提出した上奏文(題本)の副本であり,これまで十分な調査・研究が行われておらず,また当該時期の題本の原本が多く散逸している関係上,東北・モンゴルに関しても未知の情報を相当量含んでいると期待された。しかし,実際に閲覧してみると,予想以上に残欠がはなはだしく,系統的な情報を得ることはきわめて困難であった。
 それでも,1)当該時期に清朝が東北とモンゴルにおいて実施した一連の軍事行動への在地諸民族の動員状況;2)戦乱を避けて各地に分散した諸民族の各グループの動向;等について,若干の新たな知見を得ることができた。
なお,中国第一歴史档案館における調査以外に,北京では相当数の関連書籍を購入した。
以上の調査によって得られた知見については,これをロシア語史料から得られる情報と対比させつつ,目下分析を進めているが,具体的な発表先は現時点では確定していない。