表題番号:1998A-049
日付:2002/02/25
研究課題先進社会における価値思想の変動と「福祉危機」に関する比較制度・文化的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学部 | 教授 | 和田 修一 |
- 研究成果概要
- 福祉国家が今日その存立基盤をめぐる大きな歴史的転換点に直面していることは大方の指摘するところである。先進工業社会における福祉政策に見直しが迫られている最も直接的な原因は従来の福祉国家を支えてきた財政基盤が脆弱性を露呈し始めたことが指摘されているが、今日の福祉国家の直面する問題は単に経済状況が好転すれば自ずと解消されうるといった実行可能性(feasibility)に関わる性質の問題だけではない。それは優れて、社会正義に関わる「社会認識論」(social epistemology)という性質の問題でもある。つまり、そこで問われている問題は、社会正義の実現を与件としたうえでの個人の権利と責任性を問い直す(問題が「個人の権利と責任性を与件とした場合の社会正義」ではないという点に留意する必要がある)という問題である。福祉問題における社会正義とは分配正義のことに他ならないが、今日的な問題は、従来の経済拡大時代に当然視されてきた分配正義の理念(想)的基準(idealism)が経済効率等の機能的基準からする批判にさらされているという点に求められるだろう。たとえば年金問題において高齢者に配分される年金額の保護と釦ATG/]$G$"$j!"$=$N2者のあいだで行われる線引きを確定するうえで採用される基準は、高齢者の生活保障という理念的基準により重みを置いたものであるべきなのか、あるいは釦ATG/本研究では特に社会思想の歴史的変化の方向という文脈のなかで市民の合意形成をより容易にする制度のあり方に関する比較社会学的論点にたって問題を分析した。今回、日本とアメリカとのあいだの比較に焦点を絞ったが、アメリカにおける「コミュニタリアン」(共産社会主義運動)の考え方をわが国の福祉思想と比較した。