表題番号:1998A-047 日付:2002/02/25
研究課題ウル第3王朝時代ウンマにおける船の運行と管理
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 前田 徹
研究成果概要
 本課題では、ウル第三王朝時代のウンマから出土した行政経済文書の分析を通じて、舟の運行と管理を検討した。初期王朝時代が馬車中心であるのに対して、ウル第三王朝時代は舟の利用が飛躍的に伸びた時代である。大きさと用途に区分された舟に関する用語が多数、経済文書に記録された。舟の管理と運行に関する経済文書も多く残された時代である。情報量に優れたウンマの行政経済文書から明らかになる舟の管理と運行について、その特徴をまとめると次のようになる。
1) 舟の建造の補修を行うのがマルサmar-saと呼ばれる箇所であった。ラガシュにおいては、ニナ市区など三箇所にマルサが存在したが、ウンマでは一箇所であった。マルサは舟の建造に必要な各種の材料の貯蔵所でもあり、さらには織物工房なども付随していたと思われ、一大工房を形成していたのである。
2) 船頭は、舟の管理に責任をもつ者であり、マルサに所属していた。彼らを統括する者がおり、彼はマルサにおける管理職であった。船頭は舟の破損や破壊に責任を持った。
3) 舟の運行に関しては、船全体を統括する運行管理部のような組織はなく、地域や職種によって区別された運用であった。舟それ自体を管理するのが船頭であったが、運行は労働集団が担った。この場合他の運河労働などと同じく、同一の運行を複数の労働集団によって担われていた。
4) 舟の管理が船頭、運行が労働集団であるが、舟に積載された物資については、ギリ(gir3)として文書に現れる者が責任者であった。舟自体、舟を動かすこと、積載物、それぞれに別の責任者がいたことになる。