表題番号:1998A-025 日付:2002/02/25
研究課題戦前日本における防空法制の形成と展開―現代への教訓
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 水島 朝穂
研究成果概要
 防空法制の形成と展開に関する資料収集については、今回とくに旧東京市の空襲被災住民関係の一次資料の入手に成功した。担当官吏の孔版・手書きの資料であり、今後その分析により、空襲が住民に及ぼした影響等が明らかとなろう。また、戦前の防空法制や戦後の災害法制との比較で、ドイツの軍事・安全保障関係の文献も収集した。これらの検討も鋭意進めている。ただ、防空法制の実施の裏付け・確認のための関係者(元・隣組長や警察・消防関係のOB等)への取材・聞き取りは、諸般の事情で十分に出来なかった。その分の費用で、関連する書籍の収集を行った。
 この研究は、民衆の具体的な生活関係のなかに、防空法制がどのように機能していったかを明らかにするものであると同時に、市民の視点からする「安全保障」のあり方を問う憲法政策学的課題にもこたえようとするものである。すでに、戦前の防空法制に関する実証研究の一端は、「防空法制下の庶民生活(1) ~(8) 」(三省堂ぶっくれっと116 ~123 号)として公表しているが、本研究助成によって得た資料の分析・検討を加えて、今後、単行本として公刊したいと考えている(出版社も決定)。ただ、1999年3 月から2000年3 月まで在外研究員としてドイツに滞在するため、刊行は2001年以降になる予定である。
なお、「現代への教訓」というサブタイトルとの関わりで、周辺事態法案等と関連した自治体・民間の軍事的協力の問題の検討も行った。これに関連する成果としては、この1年の間に、単著『この国は「国連の戦争」に参加するのか―新ガイドライン・周辺事態法批判』(高文研)、共著『恒久世界平和のために―日本国憲法からの提言』(勁草書房)、同『日米新ガイドラインと周辺事態法』(法律文化社)、同『最新有事法制情報』(社会批評社)、共編著『グローバル安保体制が動きだす』(日本評論社)を刊行した。関連業績として挙げておきたい。