表題番号:1998A-023 日付:2002/02/25
研究課題現代社会における扶養と相続
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 田山 輝明
研究成果概要
扶養という概念は、しばしば介護に近い意味で用いられる。例えば、老後の面倒を見てもらったから、相続財産を多く与えたいという場合に「老後の面倒」の代わりに「扶養」という概念を用いるとすれば、介護と扶養の両方の意味になる可能性がある。扶養という概念を法律的に厳密に用いるのであれば、民法上の扶養義務との関連で用いるべきである。
 今年度の研究では、この点を明らかにするために、ドイツにおける判例を紹介する形で問題点を整理した。例えば、民法上の扶養義務者がいるのに、高齢者が公的扶助を受けて生活している場合には、費用を負担した公的機関は後に扶養義務者に対して求償することが出来るのである。さもなければ費用負担を免れた扶養義務者が不当に利得することになるからである。
 今後の研究としては、上述の概念的整理を前提として、介護と扶養の関係にまで論点を広げて検討する必要がある。いわゆる長男の嫁の介護に対して相続面での配慮が法的には認められていない点等を取り上げて改善を求める主張を展開する必要があると考えている。
 さらには、その点とも関連するが、遺留分制度の抜本的な解決についても検討する必要がある。なんらの介護も費用負担もしなかった法定相続人に遺留分が保証されている根拠は一体何であるのか、が問いなおされなければならない。