表題番号:1998A-022 日付:2002/02/25
研究課題家事調停制度の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 棚村 政行
研究成果概要
終戦後制定された新憲法を受けて、民法の親族相続編は大幅な改正を経験したが、1949年には、新たな家族法の理念を実現し、家庭問題と少年問題を専門的総合的に処理する家庭裁判所が発足した。今年は家庭裁判所創設50周年にあたる年でもあった。
ところで、家庭裁判所では、家族という親密で継続的な人間関係でのトラブルは、他律的強制的解決ではなく、当事者による自律的な納得づくの解決によることが望ましいとして、家事調停という話し合いをベースとした紛争処理を重視している。1997年の家事調停の新受件数は、10万2322件と増加の一途を辿っており、家庭紛争の解決のため調停制度が果たしている現代的役割はきわめて大きい。
 しかしながら、家事調停をめぐっては、調停委員の具体的調停運営に関するマニュアルなども統一的に作成されるには至っていなかった。そこで、本研究では、夫婦関係調整、婚姻費用分担、財産分与等の各調停運営マニュアルの作成を試みることで、個々の調停委員ごとにバラバラな調停運営について、統一的な実務指針やガイドラインを提示すべきことを明らかにし、その成果の一端は拙稿「面接交渉をめぐる調停運営の技法」『現代調停の技法-司法の未来』142頁以下(判例タイムズ社、1999年9月)で公表した。
 また、家事調停における秘密保持と情報の開示の問題についても、カリフォルニア州での家庭裁判所サービスでの動向との比較研究は、すでに拙稿「家事調停における秘密保持の原則」早稲田法学69巻4号95頁以下(1994年)において明らかにした。
 本研究では、わが国における実情と問題点及び今後の展望を行い、とくに、調査官の調査報告書の開示や守秘義務との関係で理論的実務的な面からの問題点の整理と具体的提言を試みた。その成果は第16回日本家族〈社会と法〉学会学術大会で報告され、学会誌(家族〈社会と法〉16号掲載予定である。