表題番号:1998A-018 日付:2002/02/25
研究課題フランスの有期労働契約に対する立法規制の展開過程の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 島田 陽一
研究成果概要
 フランスにおける有期労働契約法制は、1979年に最初の立法が行われて以降、1982年、1985年、1986年および1990年と四回の改正を経てきた。これらの改正のなかで、フランスにおいては労働契約は期間の定めない契約が原則であり、有期労働契約は例外として特別に認められるという法制が確立された。また、派遣労働が有期労働契約とほぼ同様の法規制に置かれていることも重要な特徴として指摘できる。
 有期労働契約が利用できるのは、一時的・臨時的な業務、季節的業務ならびに他の労働者の代替労働の場合についてである。また契約期間は、一般に18ヶ月が上限されている。契約更新は、一回にかぎり認められているが、その場合もこの上限を超えることはできない。
 このような有期労働法制は、有期労働契約を不安定雇用と位置付け、その利用が安定雇用としての期間の定めない労働契約を減少させることを防止しようとする政策の表れと解することができる。ところが、他方で政府は、長期わたり失業率が10%を超える状況にあって、雇用対策としてさまざまな有期労働契約を生み出している。ここに有期労働契約法制の基本政策が雇用問題への対処のために純粋な形では貫徹しえないという状況をみることができる。
 また有期労働法制は、解雇法制と極めて密接に関連している。フランスの場合、解雇が違法である場合でも、損害賠償による解決が基本的な姿である。このため、有期労働法制違反のサンクションとして、期間の定めのない労働契約への転化を認めても、実質的には従業員としての地位を承認することにはならない。この点が日本法を考えるうえで、重要な示唆になると考えられる。