表題番号:1998A-017 日付:2002/02/25
研究課題先占の法理と時際法
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 島田 征夫
研究成果概要
 時際法は、時代とともに変わる国際法のことをいう。時際法として、最もよく引用されるのが無主物先占の法理であるとされる。国際法上、この先占の法理の要件は発見から始まって次第に実効的占有、そして社会的占有に変わってきたと言われる。周知のとおり、現在の国境紛争の多くは島の帰属をめぐって争われている。先占の法理の変遷を立証することによって、日本のかかえる国境紛争である竹島や尖閣諸島の領土問題を解決する手掛かりを探ることが本研究の目的である。
 本年度、外国の大学や図書館と連絡をとり、書物を含めて多くの内外の資料を収集した。その範囲は国際法にとどまらず、歴史、政治、社会の分野にも及んでいる。さらに、本研究の一環として重要なのは、インターカレッジの「国際法理論史研究会」(代表・柳原正治九州大学教授)への参加である(研究会は1998年度は3回で、9月に東京、12月に東京、そして1999年3月に福岡で開催した)。この研究会には、国際法の歴史に関心をもつ国際法学者が毎回積極的に参加しており、19世紀の国際法学を研究する上では日本でも屈指の議論の場を提供している。小生は、この研究会で、本研究に大いに参考になる示唆を数多く得たことを記しておきたい。
 こうした実績を踏まえて、現在論文を構想中である。テーマは「19世紀における国際法上の先占法理の課題」(予定)とし、主に当時の新興国ドイツの主張とそれまでイギリスなどが主張していた理論との対立をとらえることを主眼としている。