表題番号:1998A-013 日付:2002/02/25
研究課題知識中心型経済成長理論の学史的研究ージョン・レーの場合
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 専任講師 若田部 昌澄
研究成果概要
 現在、経済学においては、内生的あるいは知識中心型成長理論(endogenous or knowledge-based growth theory)に代表されるように、経済成長の原動力としての新しい「知識」の創造ー発明、革新、企業者精神、熟練などの人的資本の蓄積ーの重要性が見直されてきている。本研究は、これまで国内外においてあまり知られてこなかったジョン・レー(John Rae, 1796-1872)が、まさにこの経済成長における知識の重要性を認識して経済理論を構築していたことを明らかにするものである。この研究計画に基づいて、期間内に行われた研究は、主として下記の研究成果に集約される。その内容は、収穫逓減に基づく経済成長理論がいずれ成長の終焉を迎えざるを得ないのに対して、ジョン・レーは新しい「知識」の創造ー熟練、教育による人的資本の蓄積、発明・革新、企業者精神ーが経済成長を長期にわたって持続することを可能にすると考えていたとするものである。レーの唱えたさまざまな実践的政策提言(新知識の創造を推進するための特許・報奨金制度、技術革新の可能性を根拠とした幼稚産業保護、教育制度発展)は、彼の知識中心型経済成長理論の観点から評価できるのである。なお、論文作成にあたっては、研究計画にあるように、カナダ、トロント大学のサムエル・ホランダー(Samuel Hollander)教授の研究レヴューを受けた。