表題番号:1998A-012 日付:2002/02/25
研究課題進化アプローチによるリスクに対する態度の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政冶経済学部 助手 荒木 一法
研究成果概要
 本研究では、近年発展が著しい進化アプローチを用いて、個人のリスクに対する態度の生成過程をモデル化し、その帰結を分析することを意図した。
 具体的には、進化アプローチを用い、リスクの性質によって、伝統的な期待効用理論に対応する態度ばかりでなく、それに反する態度が生成する可能性を示したA.Robson 、T.Bergstromらの研究結果が無限に増大する人口を仮定していることに着目し、同様の結果が一層現実的な有限人口の仮定のもとで成立するか否かを検討した。99年4月現在、導いた結果は次のとおりである。
(1)リスクに対する態度を同じくする主体間でリスクが完全に独立している場合、期待効用を最大化するタイプが支配的となる。
(2)リスクに対する態度を同じくする主体間でリスクが強く相関している場合でも、通常の出生・死亡過程を用いたモデル化を行った場合、当該確率過程の定常分布は期待効用を最大化するタイプに最も高いマスを与える。
(3)リスクに対する態度を同じくする主体間でリスクが強く相関し、かつ、リスクの帰結が同時に広範囲に及ぶ場合には、期待効用理論に反するタイプが支配的となる場合がある。
(4)結果(3)は、初期状態において、リスクに対する態度が非常に多く連続的に存在した場合には、成立する可能性が低い。