表題番号:1998A-002 日付:2002/02/25
研究課題為替レート・ダイナミックスの研究:確率差分方程式による解法
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授  秋葉 弘哉
研究成果概要
1.為替レート決定理論の現代理論であるアセットアプローチによれば、為替レートは前向きの性質を持ち、従ってジャンプ変数であるという結論が導かれている。この結論は、もちろん合理的期待形成に基づいているが、実証研究では、そのような変数が得られないため、当然のことであるが極めて不自然な、過去のデータを用いざるを得ないことになる。本研究では、このような極めて不自然な為替レート決定の現代理論を是正するために、コンシステントな動学モデルから、経済学的に意味のある結論を導くことを目的にしていた。選択したモデルは、ドーンブッシュのオーバーシューティング・モデルで、微分方程式ではなく、確率差分方程式で定式化し直してみた。
2.解法の方法はラグ演算子を用いて係数行列の逆行列を計算するに際して、ルベーグ積分を用いたフーリエ変換の反転公式を用いて、係数を求めようと試みるものであった。その場合に、モデルの外生変数と確率的な誤差項は共分散定常的と仮定することが出来れば、為替レートと物価指数を内生変数とするモデルでは、係数行列が2行2列となり、合計4つの係数を反転公式から求めればよいことになる。内生変数間の相互関係から、1つの係数に対して、確率変数がとりうる値域内の任意の閉区間における値を指定することによって、残りの係数に対しても陽表的な解を得ることが出来た。この結果の意味することは重大であり、合理的期待に基づく為替レートといえども、すべての「過去」の動きと共に、「将来」の動きの期待値に依存して、今日の動きが決定されることが示された。
3.さらに、この解法を、もう一つの有力な為替レート決定の現代理論であるポートフォリオ・バランス・モデルに適用して、同様の手順で解いてみた。オーバーシューティング・モデルのときのように簡単ではなかったが、所期の目的である経済学的に意味のある解は得られた。