表題番号:1998A-001 日付:2003/10/27
研究課題マルチメディアの社会的応用と行政の対応
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 縣 公一郎
研究成果概要
 1998年度は、マルチメディアの社会的応用と行政の対応というテーマの枠内で、国際大学グローバルコミュニケイション研究センターにおけるメディア産業基本法研究会とタイアップし、日本におけるマルチメディアの社会的進展に対する法制化の遅れに焦点を当てた。日本におけるマルチメディア関連法体系は、1952年にその大綱が定まった通信・放送関連諸法から個別的に規定されるのみで、1985年以降通信法関連では、旧電電公社のNTTへの民営化等を始めとした多くの法改正が実施されたものの、通信と放送の相互関係に付いては、全くといって良いほど法的対応が為されていない。コンピュータと電話回線の接続による情報と通信の一体化に加えて、ディジタル化の進展に伴う放送網と通信網の融合への展望が開け、関連分野を統合したマルチメディアのハードウェアとソフトウェアの体系的な規律が必要となっている。本研究では、こうした側面に行政が対応するための法的措置の必要性を強調し、マルチメディアに関する経済的規制の極小化と社会的規制の適正化に向けて、その方途を探っている。研究者自身は、特にドイツにおけるマルチメディア関連法との比較において、検討作業を進めてきた。
 こうした枠組において、マルチメディアのハードウェアの側面では、電子的情報流通のための通行権管理法制定提案を検討中である。同法案では、電子的情報流通のための通行権を競売にて付与し、この付与を通じた通行権の規制のみを経済的規制として残存させる。通行権取得事業者には、兼業の禁止や、オープンアクセス保障義務、ユニヴァーサルサーヴィス提供義務を課し、情報流通の適正を確保する。この場合、通行権を以って、従来の通信と放送を一括して包含した電子的情報流通のハードウェア敷設・管理の権利と定義される。この通行権は、独立行政委員会としての通行権管理委員会が監督する。このほかに、ソフトウェアの側面として、情報の自由な流通法案を同時に提起して、表現の自由や青少年保護、個人情報保護、Decencyの問題等に対処する。これら2法案の制定を通じて、従来の電気通信事業法、放送法、電波法等の廃止を実現し、関連領域を横断した法体系の整備を目指したい。この法案提起の準備作業は、99年度も継続して実施し、出来るだけ早い時期に、正式な形で問題提起したい。
 本研究成果としての政策提言は、以下のサイトに公表されている。
http://www.glocom.ac.jp./proj/medialaw 及び http://www.wwvi.org/dtv.htmlを参照されたい。