表題番号:1997B-035 日付:2003/03/27
研究課題東アジアの経済と環境問題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 鷲津 明由
(連携研究者) 社会科学部 教授 浦田 秀次郎
(連携研究者) 社会科学部 教授 弦間 正彦
(連携研究者) 社会科学部 教授 長谷川 信次
(連携研究者) 社会科学部 助教授 赤尾 健一
(連携研究者) 政治経済学部 教授 中村 愼一郎
研究成果概要
 本研究は東アジア地域を中心とする環境問題の以下のような側面についてすすめられた。
1.東アジアにおける水資源利用に関する研究
本研究においては、高度化した経済システムを持った東アジアの日本、韓国、台湾における貴重な環境資源の一つである水資源の利用に関する経済分析が実施された。聞き取り調査を踏まえ、データ分析がなされ、水資源の需要関数が計測された。また、それをもとに東アジアにおける今後の水資源の需給状況が予測され、場合によってはひっぱくすることが確認された。
2.「持続的発展」の観点からみた各国の社会状況に関する研究
地球環境問題のキィワードである「持続的発展」の観点から社会の現状を評価し、その実現に向けて効率的な政策を模索するための基礎データとして、各国政府や関連する諸研究機関では環境・経済統合勘定の作成に取り組んでいる。ここでは、経済企画庁を中心として進められている日本の取り組みについて調査し、いくつかの課題を明らかにした。
3.廃棄物問題に関する産業連関的研究
従来の主流的経済学は、物質の流れのうち、専ら財に関わる前半(いわゆる動脈)部分のみを分析対象とし、財の生産に伴い発生する廃棄物や、時間を通じる財の廃棄物化に関わる後半(いわゆる静脈)部分を、無視又は軽視して来た。物質循環の記述としては、不完全であったと言わざるを得ない。本研究は、生産・消費活動に伴う廃棄物の発生、再利用、処理・処分から構成される”静脈部門”と財生産を司る"動脈部門"との間の量的相互連関関係を把握し、経済学における物質循環を閉じた体系とする事を目指している。産業連関表・産業連関モデルは、生産・消費活動に伴う財の循環を記述するための優れた分析装置である。しかし、生産・消費活動に伴って不可避的に発生する廃棄物の流れを包括していないので、物質循環の記述としては不完全である。産業連関表の概念を拡張した廃棄物循環勘定(以下、「リサイクル産業連関表」と呼ぶ)を提唱し、これから応用分析用のモデルを導いた。経験的知見を得るために、自治体データを用いた実証分析を行った。応用対象として、一般廃棄物再資源化への先駆的取り組みで知られる北海道のF市を選んだ。同市についてリサイクル産業連関表を推定し、最終処分量とエネルギーの側面から、その廃棄物処理政策を評価した。
4.中国を中心とする東アジア地域の経済と環境問題に関する研究
東アジアの環境問題の深刻さは周知のことであるが,それらの地域において日本と同様の解決策をほどこしても,背後の経済環境に見合わず定着しないという問題がある。そこで,これらの地域にとって,どのような環境上の問題がもっとも重大なのか,それを解決するためにはどのような方策が最も有効なのかを考察するための研究が必要であった。そのような研究のファーストステップとして,まず中国を例に取り,経済データおよび工学データ等を用いて,現在の環境状況を詳しく分析し,どのような解決策が望まれるかを考察した。
5.企業の環境問題への対応に関する調査研究
大気汚染、地球温暖化、資源の枯渇、廃車の不適正処理、処分場の不足など、自動車をめぐる環境問題は多様化・深刻化している。この中で、自動車のリサイクルを中心として、自動車メーカーの対環境戦略について考察する。世界の自動車産業は、過剰生産能力の調整と同時に、環境技術の開発レースを舞台に、企業間の合従連衡がダイナミックに進んでいる。環境問題への対応は、21世紀の自動車メーカーの国際競争力の再構築に大きく関わっている。