表題番号:1997B-021 日付:2002/02/25
研究課題細胞構成素材と細胞機能の生物物理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 石渡 信一
(連携研究者) 理工学部 教授 浅井 博
(連携研究者) 理工学部 教授 鈴木 英雄
(連携研究者) 理工学部 助教授 船津 高志
研究成果概要
 細胞機能として主に生体運動を取り上げ、その構成素材の機能を1分子レベル、あるいは超分子集合体レベルで顕微解析した。第一に、筋肉細胞を始めあらゆる生体細胞運動を担うアクチン・ミオシン分子モーター系と微小管・キネシン分子モーター系の、2種類の生体分子モーター系を取り上げ、その分子間結合(破断)力を1分子顕微計測した。その結果、ミオシン、キネシンともに、単頭結合(約7pN)と双頭結合(約15pN)を取りうることが分かった。特にキネシンの場合には、ATP非存在下(硬直状態)では単頭結合、AMPPNP存在下(ATP状態)では双頭結合状態にあり、その間に平衡関係が存在することが明らかになった。しかも、それぞれの状態でのキネシン分子の弾性率を、約0.4pN/nmと0.8pN/nmと見積もることが出来た。第二に、アクチンフィラメント再構成心筋収縮系を用いて、pH減少に伴う張力減少の程度が、制御タンパク質トロポミオシンによって制御されることを明らかにした。第三に、Ca2+によって収縮する際のツリガネムシ茎の弾性的な性質を、温度を変えて顕微解析したところ、ツリガネムシ茎はゴム弾性の性質を持ち、エントロピー力(熱揺動)によって収縮することが示唆された。しかもこの収縮の主役は、従来から知られていたカルシウム結合タンパク質(スパスミン;分子量約2万)ではなくて、分子量20万のタンパク質であることが、化学修飾法の結果から示唆された。第四に、シャペロニン分子を取り上げた。シャペロニンGroELはATP存在下でGroESと相互作用しつつタンパク質の折れたたみを助ける。GroELとGroESをそれぞれ異なる蛍光色素で標識し、1分子蛍光イメージング技術を用いて結合解離を解析した。その結果、結合速度定数k+は1 x 107M-1-1と見積られ、GroESが基質タンパク質をGroELの中央に落として蓋をし、折りたたみに必要な時間を確保するタイマーとして機能していることが示唆された。