表題番号:1997B-019 日付:2002/02/25
研究課題未定項表現を用いた形式意味論と推論体系の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 守屋 悦朗
(連携研究者) 教育学部 教授 中野 美知子
(連携研究者) 法学部 教授 原田 康也
(連携研究者) 教育学部 講師 西野 哲朗
研究成果概要
 本研究では、これまで計算機科学者および言語学・応用言語学者がそれぞれ独自の理論に基づいて研究していた自然言語解析の様々なアプローチを、両分野の研究者が協力して双方の立場から検討した。
 1997年度には7回の研究会を開催し、形式的意味論の観点から、線形論理(Linear Logic)を応用したGlue LanguageおよびICOTで開発された知識表現言語QUIXOTEについて検討した。Glue Languageは最近の語彙機能文法に基づいているため、1997年までに発表されていた線形論理の応用を1982年の古典的な語彙機能文法の枠組みに適用すると様々な発話状況により異なる読みの違いを反映させることができる等の知見を得た。一方、線形論理そのものは、命題論理に制限しても決定不能、推論規則をごく限られたものに限定してもなおNP困難である等、強力すぎることが分かった。
 そこで、1998年度は、従来の語彙機能文法を制限した西野の提案になる上昇型語彙機能文法を取り上げ、1998年に提案された語彙機能文法の文生成の枠組みであるOptimal Syntaxについて検討した。1998年度は8回の研究会を持ち、Optimal Syntaxについては、西野がL.G.Valiantの提案したニューロイダルネットを用いてプログラム作成と計算機科学の立場からの問題点を検討し、中野は中学生のbe-動詞の文法判断にOptimal Syntaxの分析と整合性があるかどうかを検討し、守屋が推論過程を数学的に吟味した。
 一方、日本語の不定表現とその形式意味論上の取り扱いに関しては原田を中心にして研究を進め、いくつかの項目に関して実際に文献に現れた大量の例文から問題点を抽出することに成功し、自然言語の意味論的表示における変項の取り扱いが今後の研究課題であることを認識するに至った。現在は、SRI InternationalのJ.M.Gawron博士も共同研究者に加え、日本語の不定語表現と英語の関連する構文との比較対照についてひきつづき研究を進めている。
 以上の成果の一部はすでに論文やシンポジウム等で発表したが、1999年8月に開催された国際応用言語学会世界大会において本研究グループ主催によるシンポジウムを開催し、成果の集大成発表と今後の展望について討論した。