表題番号:1997B-017 日付:2002/02/25
研究課題下等脊椎動物の脳下垂体ホルモンとその遺伝子についての研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 石居 進
(連携研究者) 教育学部 教授 菊山 栄
(連携研究者) 社会科学部 教授 輪古 博
研究成果概要
我々は脳下垂体ホルモンのうちの糖タンパク質ホルモンである3種のホルモンの共通サブユニット、すなわちαサブユニットは脊椎動物のなかで構造が比較的よく保存されていることから、このホルモンの構造を比較することによって進化距離の離れた色々な脊椎動物間の関係を調べるのにはよいのではないかと考えた。そこで色々な脊椎動物の中でも、両生類の祖先に近いといわれている肺魚のαサブユニットの分子をコードするcDNAをクローンニングして、その塩基配列を決定し、アミノ酸配列の推定を行った。その結果、肺魚のαサブユニットは硬骨魚類の多くの種よりもはるかに哺乳類や鳥類に近いことが明らかとなった。そこで我々はこれまでクローン化されてなかった3種類の両生類(ヒキガエル、ウシガエル、アカハライモリ)のαサブユニットと肺魚それとの間の違いは、意外にも肺魚と哺乳類。鳥類との間の違いよりも大きいという結果となった。アカハライモリについても似たような傾向があった。
 このことから我々は両生類、ことに無尾両生類のαサブユニットは他の脊椎動物よりも進化速度が速かったと考えた。硬骨魚類の中でも大きなグループを占める条鰭類より(普通の魚類はほとんどこれに入る)でも同じようにαサブユニットの進化速度は速かったと考えた。この考えが正しいとすると、魚類の中でも下等な軟骨魚類のαサブユニットと肺魚のそれとの違いは、条鰭類と肺魚との違いよりも小さくなるはずである。そこでドチザメのαサブユニットのcDNAをクローニングして調べたところ、期待通りの結果となって、上の仮定が正しいと判断された。