表題番号:1997B-010 日付:2002/02/25
研究課題宇宙環境で使用可能な放射線線量計の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学総合研究センター 教授 菊池 順
(連携研究者) 理工学総合研究センター 名誉教授 道家 忠義
(連携研究者) 理工学総合研究センター 客員助教授 林 孝 義
研究成果概要
 スペース・ラボ、スペース・ステーション等の宇宙空間での実験や作業を行う機会が増加してきたために、長期滞在による人体への放射線被爆は重大な問題となってきた。最近の解析結果によれば、銀河宇宙線による被爆量は、太陽活動の静穏期に年間50レムにも達する。また、最近の観測例からの推定によれば、大型の太陽フレアーからの粒子線の寄与は、400レムにも達している。このような場合の線量当量への寄与はその大半がヘリウムより重い重粒子からの寄与である。これまでLET(linear energy transfer)分布の直接の測定は困難であるとされ、いわゆるRossi-chamberがしばしば使用されてきたが、これは間接的な測定であった。そこで我々は両面にstrip電極を持つシリコン位置検出器を用いる方法により、tissue equivalentなLET-chamberを考案した。これまでに3枚のシリコン位置検出器を組み合わせたテレスコープの開発と製作を終えて、その基本性能をα線・β線・加速器からの重イオンを用いて確認した。さらにこの検出器は1997年以降数回にわたってスペースシャトルに搭載して実際に観測を行い、大気圏外粒子のエネルギー分布をとることに成功した。
 またその後、6枚のシリコン位置検出器をサイコロ状に組み合わせて、その周囲を生態等価物質で覆い全方向に対して均等な感度を持った立方体テレスコープを試作し、放医研の加速器からの重イオンを用いたテストを行い、良好な結果を得た。