表題番号:1997A-598
日付:2002/02/25
研究課題平安時代を中心とする日勤文学の研究―日記文学とは何か―
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 高等学院 | 教諭 | 福家 俊幸 |
- 研究成果概要
- 日記文学研究の困難さとして、ここの作品の自立性が強く、作品相互の影響関係が認定しがたいという問題点があるように思われる。つまり、文学史の上での日記文学史のようなものが構想されにくいという問題である。ここには、物語と異なり、必ずしも多くの読者を獲得してきたとは言いがたい日記文学の享受層の問題も影を落としているのだろう。
しかし、近時の日記文学研究の着実な歩みは従来見落とされがちであった作品相互の影響関係を少しずつ明らかにしており、作品それぞれを通底するジャンルとしての特徴もまた明らかにされてきているように思われる。このような新しい研究動向に、中世日記文学の読みの深まりが拍車をかけたことは言うまでもない。また、女房日記という、従来充分な検証を受けてきたとは言いがたい問題に新しい光が与えられたことも、日記文学研究の活況に資するところが多かったと思われる。また、近世日記文学の発掘作業も急速に成されてきており、多くの成果をあげ、また今後の発展が期待されている。
このような研究現況を鑑み、本年度は「日記文学とは何か」という命題を考えるべく、基礎作業を行った。具体的には、中世日記文学関連の資料の収集をはじめ、『紫式部日記』の記録性を考えるべく、他の漢文記録との関係の考察や服飾描写の意味の考察を行った。後者の考察は論文として発表することができたが、前者も近々に明らかにすることができればと考えている。記録性の問題は日記文学を考える上で、なお重い問題と思うので、他の日記文学(中古、中世、近世)ともども考察を進めていきたい。むろん、記録を超越していく志向の中に日記文学の文学性が存するわけであろうが、その境界を鮮明にするためにも、記録性の問題は更に考察されてしかるべきと思う。いずれにしても、日記文学を日記文学たらしめているジャンル的特性を明らかにすべく、今後更に総合的視点から考察を進めていきたい。
研究成果の発表
1997年12月 『日記文学研究第2集』(「『紫式部日記』の服飾描写の方法」・新典社)
1997年11月 『日本古典文学研究史大事典』(「紫式部日記」「紫式部」の項目・勉誠社)