表題番号:1997A-582 日付:2002/02/25
研究課題ディジタル信号処理専用プロセッサのためのハードウェア/ソフトウェア分割手法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 戸川 望
研究成果概要
DSP(Digital Singal Processor; ディジタル信号処理専用プロセッサ)は、高精細画像処理に代表される今日のディジタル信号処理に不可欠なデバイスである。DSPのためのハードウェア/ソフトウェア分割(HW/SW分割)とは、DSP内部において、ハードウェアとして実現する部分とソフトウェアとして実現する部分とを決定する問題であり、DSP自身ひいてはDSPを持つディジタル信号処理システムの価格、面積、性能を決定するものである。HW/SW分割手法を計算機によって自動的に実現することは、5年程度前から始まった新しい研究であり、これまで、一般のマイクロプロセッサに対しての報告があるのみである。DSPは、マイクロプロセッサに存在しない数多く信号処理専用ユニットを有しているため、本質的にマイクロプロセッサに対するHW/SW分割と問題を異にする。DSPのHW/SW分割には、従来研究がなされてきた集積回路の自動設計手法の概念、特に、DSPのデータパスを対象とした設計候補列挙による高位設計の概念、を応用できると考える。
 以上のような背景から、本研究では、動画像の符号化・復号化、特徴抽出、強調復元といった画像情報処理アプリケーションを対象に、アプリケーションプログラム群専用のDSPハードウェアの計算機による自動合成システムを考え、システムの中核をなすHW/SW分割手法を構築した。構築されたHW/SW分割手法は、次の処理に基づく。(1)まず、DSPハードウェアに対して想定される全てのハードウェアユニット(積和器、アドレッシングユニット、ハードウェアルーピング回路)を付加したプロセッサモデルを定義し、このモデル上で与えられたアプリケーションプログラムをコンパイルする。この結果得られたアセンブリコードは、ハードウェアコストが増加するが実行時間は最短となる。(2)続いて、ハードウェアユニットによる実現部の一部を徐々にソフトウェアによって代替する。得られるアセンブリコードは、徐々に実行時間が長くなるが、DSPハードウェアに必要とされる面積は小さくなる。(3)時間制約に違反するまでこの処理を繰り返すことにより、アプリケーションの実行時間が時間制約を満たし小面積かつアプリケーションプログラムに最適なプロセッサコアを合成することが可能となる。
 構築された手法を用いることで、短期間でアプリケーションプログラム群に適合したDSPハードウェアを構築・評価することが可能となり、短期間のうちに最新の画像情報処理アルゴリズムを実現するDSPおよびDSPを含めた信号処理システムを構築可能となった。
研究成果の発表:
1998年3月
戸川望、桜井崇志、柳澤政生、大附辰夫、“ディジタル信号処理向けプロセッサのハードウェア/ソフトウェア協調合成システム、”電子情報通信学会技術研究報告、VLD97-115。
1998年3月
川崎隆志、戸川望、柳澤政生、大附辰夫、“ディジタル信号処理向けプロセッサの自動合成システムにおける並列化コンパイラ、”電子情報通信学会技術研究報告、VLD97-116。
1998年3月
濱辺雅哉、能勢敦、戸川望、柳澤政生、大附辰夫、“パイプラインプロセッサのハードウェア記述自動生成手法、” 電子情報通信学会技術研究報告、VLD97-117。