表題番号:1997A-562 日付:2002/02/25
研究課題歴史的都市景観保存と両立する地域防災対策手法
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 長谷見 雄二
研究成果概要
全国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)のうち市街地を構成する28地区を対象としてアンケートによる防災意識及び防災安全性の実態を把握するための調査を行った。この結果から、都市内に存在する伝建地区では空家の増加と定住人口率の低さが地域防災の課題を特徴づけているのに対して、小都市や集落型の地区では高齢者人口比率の増加が顕著であること、更に、これらの課題に対する地域共同体の取組は、小都市・集落型の方が大都市型伝建地区より総じて積極的であることなどが判明した。また、土蔵・塗屋系の町家は防火性能は高い反面、街路等に対して住宅が閉鎖的であるため、近隣関係が疎遠になる傾向があり、地域災害における近隣の協力関係の形成をかえって阻害する傾向があることが判明した。
 研究代表者が地域防災計画を指導・支援している岐阜県高山市三町伝建地区を対象として、歴史的景観に影響しない地域防災対策手法として防火塗料とケーブルネットワークの適用性のケーススタディを行った。即ち、木造軸組工法の伝統的町家群の出火・延焼抑制手法として、透明性の高い防火塗料を試作し、施工直後での防火性能の確認と促進暴露試験による耐候性の把握を行ったうえ、岐阜県高山市三町伝建地区の修景建造物に適用して、この手法の景観への影響評価と今後の防火性能の経年変化の検討を進める基盤を整えた。既に防火を目的として敷設が始まっているケーブルネットワークについては、利用者の満足度等を生活実態と併せて調査し、今後、住民の急病・事故等の際の通報機能等を付加すれば、本地区が直面する種々の地域安全上の課題の解決に著しく寄与し得ることが判明した。
研究成果の発表
1998年5月 日本火災学会研究発表会「重要伝統的建造物群保存地区における地域防災の基盤的条件について」
1999年7月 The Sixth International Symposium on Fire Safety Science(投稿中)
“A Regional Fire Safely Planning for Wooden Preserved Historic District”