表題番号:1997A-553 日付:2006/03/24
研究課題株式市場のマイクロストラクチャー―出来高をめぐる実証研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 大村 敬一
研究成果概要
株式市場が活況を呈して株価水準が高いときには売買高が比例して高くなるとか、活気がなく株価が低迷しているときには売買高が少ないとか、株価変化と売買高との間に一定の関係があるかのようにいわれる。果たして、株価変化と売買高にはいわれるような正の関係があるのだろうか。米国における多くの実証研究によれば、株価変化の絶対値と売買高の間に正の関係が存在し、さらに、その感応性は株価上昇時と下落時で異なることが報告されている。それでは、我が国において、株価変化と売買高との間にどのような関係があるのだろうか。残念ながら、本邦での体系的な実証研究はこれまでほとんど行われてこなかったので、我々は、新たに分析作業を行った。
 検証の結果によれば、我が国における株価変化と売買高の関係について米国におけるとほぼ同様の結果が得られた。また、推定された感応性指標は市場の流動性を示す指標として売買高そのものよりは時価総額とよく対応している。しかし、このような実証結果に理論的な説明を与えることにはこれまで必ずしも成功していない。株価は、いうまでもなく投資家の売買の結果として決定されるのであるから、両者の間に何らかの関係が存在するのであろうことは予想できるが、それでは、株価(あるいは株価変化)と売買高の間にどのような理論上の関係があるのかとなると明らかにされているわけではない。また、上昇時と下落時で非対称性が存在することについては、空売りの制度的制約や空売りポジションの作成コストが高いため、株価下落時には売買が成立しにくくなるからと説明されることが多いが、この点についても、決定的な説明を与えるには至っていないのが現状である。
本研究には次の特徴がある。第一は、特に局面での非対称性に注目し、クロスセクションと時系列の両面から検討したことである。第二の特徴は、λ'を推定する際に、株価の価格帯による刻みの相違の影響を考慮したことである。第三の特徴は、非対称性について、市場制度要因としての呼値の影響、個別銘柄の属性の違い、たとえば、信用取引、株価指数採用銘柄との関係も考慮して推定し、非対称性の要因を考察した点である。
研究成果の発表
1998年3月 早稲田大学商学同攻会 早稲田商学