表題番号:1997A-542 日付:2002/02/25
研究課題個体分類を目的とする有効なクラスタ分析法とその有効性の検討、および、汎用SASプログラムの提案
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助教授 松本 芳之
研究成果概要
本研究は、心理学におけるクラスタ分析の利用の現状を整理したうえで、近年の議論の中から有用な提言を選びだし、それをもとにSAS上で分析を行うプログラムを提案した。近年、心理学ではさまざまな多変量解析を用いるようになった。中でも、クラスタ分析は多用なかたちで利用されている。その場合の適用例は、大半が個体の分類を目的としたものである。構造化、すなわち対象間の関係構造を明らかにすることを目的とする場合、因子分析を用いることが普通である。これは、伝統的事情に加え、解釈の容易さのためである。この点を踏まえるならば、われわれに必要なものは、構造化の情報を無視しても、対象を的確に群化できる、頑健な分類手法であると言える。つぎに考慮すべき点は、分析結果から一般的な結論を導くための手順である。これは、多くの研究がデータを標本として扱ううえから要請される事柄である。しかし、クラスタ分析の統計量はもともと記述統計量であり、母集団の推定や仮説検定の観点を含んでいない。したがって、クラスタ間の比較には、通常の有意性検定の手続きを用いることはできない。ここで必要なものは、同一母集団から一定数の標本を抽出し、類似性をもとに群化したとき、その群間差が偶然によって生じ得る差かどうかを確認する手順である。第3に考慮すべき点は、これらの点で有効と認められる手順を実行する際の容易さである。実用上の簡便さは、広義の研究コストを左右する要因となるからである。以上の観点から、本研究は、精度の高い分類法として2段階分類法に着目し、また分類結果の妥当性を判定する方法としてArnoldの有意性検定に注目した。また、これらの手順を実行する汎用性を備えたSASプログラムを提案し、そのパフォーマンスを確認した。
研究成果の発表:98年4月、「対人行動学研究(対人行動学研究会発行)」に論文「個体分類のためのクラスタ分析法とその有意性検定:2段階分類法とC統計量」として投稿、審査経過の現状は不明。