表題番号:1997A-526 日付:2002/02/25
研究課題清代東北における諸民族集団の再編に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 専任講師 柳澤 明
研究成果概要
本研究は、中国東北地方の現在の諸民族集団の分布やエスニシティは、清朝による統治体制の展開の中で再形成された結果であるとの見通しを、具体的な資料に基づいて検証しようとするものである。こうした研究を進めるための一次資料としては、清代の中央・地方行政機関の文書(档案)のほか、日本支配期(「満州国」期)の調査報告・統計等も重要であるが、本研究では、これらのうち日本国内に所蔵されているものの収集・分析を行なった。実際に資料調査を行なった機関は、1)東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2)一橋大学附属図書館、3)一橋大学経済研究所である。うち1)においては、マイクロフィルムの形で所蔵されている『黒竜江将軍衙門档案』のうち、康煕29(1690)年~59(1720)年の部分の一部を閲覧し、多数の文書を複写した(ただし、研究者が同研究所共同研究員である関係で複写が無料となったため、支出実績には反映されていない)。また、2)、3)においては、主として満州国期の資料を収集した。資料が膨大であるため、分析はなお完了していないが、関係するいくつかの民族集団のうち、特に現在内蒙古自治区呼倫貝爾盟陳巴爾虎旗(清代においては同地域は黒竜江の所管)の主要人口を構成するホーチン=バルガ(陳巴爾虎)と呼ばれる人々の前身が、1690~94年に戦乱を避けてハルハ(現在のモンゴル国)から黒竜江地区に流入した後、清朝によって八旗制に組み込まれながら移住を繰り返す中で、次第に民族集団としての再形成を果たしていく過程が、具体的に明らかになりつつある。本研究の成果は、「ホーチン=バルガ(陳巴爾虎)の起源と変遷」(仮題)として『社会科学討究』第44巻2号に発表する予定であるが、今後中国に所蔵される関連資料を調査・収集する機会が得られれば、研究成果をさらに充実したものとしていくことができるであろう。