表題番号:1997A-508 日付:2002/02/25
研究課題民事保全法と仮処分解放金
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 栂 善夫
研究成果概要
仮差押えは、金銭債権の保全方法であるから、旧法以来、債権者の利益を害さずに債務者の保護を図る方法として、金銭債権に相当する金銭の供託により仮差押解放金の制度が認められ、仮差押解放金額は、仮差押命令の必要的記載事項となっている。これに対して、仮処分は個別的給付の実現を目的とし、金銭債権の保全を目的とするものではないから、解放金制度になじまず、いわゆる仮処分解放金なるものが認められるか争いがあったが、実務では、被保全権利が金銭的補償を得ることによってその目的を達しうる場合など特別事情があるときは、仮処分命令中に債務者が供託すべき解放金額を記載しうるとしていた。
 民事保全法は、明文の規定をもって、「保全する権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限」って、仮処分にも解放金を付すことができる場合のあることを認めた(25条参照)。それでは、これでもう問題はないのか、問題があるとすればどのような点かを整理しておくことは意義のあることであろうと研究を続けてきた。
 仮処分解放金の問題点としては、仮処分命令に記載された解放金の性質、仮処分解放金の要件、解放金額の決定基準、解放金の供託者・供託物、解放金供託による仮処分の執行停止・取消方法、解放金に対する債権者の権利行使方法などの問題があり、いくつかの点について、立法的に解決している部分もあるが、依然として多くの点で問題がなお残っていることが明らかとなった。