表題番号:1997A-503 日付:2002/02/25
研究課題非期待効用理論を用いた不確実性とゲーム均衡についての理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 助教授 荻沼 隆
研究成果概要
非期待効用理論は、期待効用理論では説明のできないいくつかの事例を説明できるという意味で、不確実性下の選択の理論として標準的な期待効用理論よりも優れた側面を持っている。標準的な期待効用理論は、複数主体の相互連関の分析に用いられるゲーム理論の基礎にもなっている。非協力ゲームの代表的な解であるナッシュ均衡は、期待効用理論を非期待効用理論に置き換えると、その存在が必ずしも保証されなくなる。この問題をどう考えるのかということに対しては、様々な考え方がありうるが、一つの方策は、非期待効用理論の中でもそのクラスをより限定的にするというものである。より具体的には、不確実性を表現する確率に事象の性質に応じて線型性と非線型性を持つという性質を持たせることである。このようなタイプの非期待効用理論の場合、ナッシュ均衡の存在問題は解決される。残される問題は次のようなものである。動学的整合性を考えたとき、非期待効用理論そのものにどのような意義があるのか。限定合理性を考慮したときに考えているようなタイプの非期待効用理論が生き残りうるものなのか。これらの問題については今後の課題としたい。