表題番号:1997A-502 日付:2002/02/25
研究課題現代福祉国家の政治発展に関する比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 藤井 浩司
研究成果概要
1980年代以降、先進資本主義諸国を直撃した経済社会危機は、低成長・高失業・財政赤字などを背景に、経済社会システムに対する中央政府の危機管理能力に対する不信を招き、「国家の衰退」といわれる状況を引き起こした。政府/公共部門の役割と守備範囲に対する全般的な見直し・再編論議が高まるなかで、「福祉国家の危機」論が唱えられるようになった。戦後先進社会の体制コンセンサスであった福祉国家体制(いわゆるケインズ=ヘヴァリッヂ・パラダイム)への信頼が失われ、「戦後コンセンサスの終焉」といわれる事態に直面している。こうした状況の下で、既存の福祉国家体制が採用した危機対応戦略は、大別すると〈縮小戦略〉と〈維持戦略〉のふたつに分けられる。
 以上のような問題認識の下で、本研究では、危機対応戦略として〈縮小戦略〉を採用した先進資本主義諸国の動向、とりわけニュージーランドにおける福祉国家体制の展開過程に焦点を合わせ、その歴史発展の特質、政策構造の特性、政治過程の特徴について、比較公共政策分析の視座から析出することを狙いとした。
 まず研究の第一段階として、現在わが国においてあまり集積されていないニュージーランド地域研究に関連した情報・データ、特に福祉国家形成にかかわる文献調査を集中的に行なった。次いで、入手された資料に基づき情報・データの整理、分析を通じて、ニュージーランド福祉国家体制の位相について、マクロ・パースペクティヴから検討を加えた。
 さらに、戦後先進社会における福祉国家体制の全般的動向からニュージーランドをはじめとする〈縮小戦略〉を採用した国々の政策展開を位置づけるため、戦後欧米諸国における福祉国家体制の発展プロセスに関する通史的理解を深めるとともに、全体論的な比較公共政策論の分析枠組に照らした福祉国家体制の分類と構造特性分析に取り組んだ。
 残された研究課題としては、ミクロ・パースペクティヴに立った個別政策に関する実証分析とそれに基づく課題析出および展望予測であり、今後も継続して研究作業を進めていく。
研究成果の発表
1998年4月 ラカー、加藤秀治郎他共訳『ヨーロッパ現代史Ⅰ』(芦書房)
1998年9月(予) 同『ヨーロッパ現代史Ⅱ』
1998年11月(予) 同『ヨーロッパ現代史Ⅲ』
1998年(予) 単著「戦後期ニュージーランドにおける福祉政策の展開」