表題番号:1997A-370 日付:2002/02/25
研究課題身体観と親子関係に関する健康心理学/社会心理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 鈴木 晶夫
研究成果概要
衣類を洗濯する場合に我々は「清潔感」の階層に従って分別する。しかしその分別は必ずしも合理的で物理的な階層に従っているわけではない。自分の衣類に対する階層と他者の同種の衣類に対する階層が一致しないことはむしろ日常的であり、「混合してもよい」階層も相手によって変化する。非言語的コミュニケーション行動としての身体接触は、情動的喚起・鎮静の効果が推測されているが、本研究では、洗濯の時に「一緒に洗ってもよい衣類の種類」を自分・父親・母親のものを組み合わせて質問することで、間接的に身体接触の様態を探った。衣類の混合の許容は、親子関係と幼時の親子間の身体接触によって変化することが推定される。
[方法]1)対象者:高校生・短期大学生・大学生、計287名。 2)調査票の構成: 洗濯の方法と衣類の扱いに対する基本的態度項目、親子関係指標、 幼時から現在までの身体接触経験評価。[結果及び考察]自分の衣類を異種混合して(例・自分のバスタオルと自分の下着など)洗濯することに対する許容度を基準値として、所有者の異なる同種の衣類の混合を対応させて検討した。自分の衣類同士の許容と自分のと他者のとの混合に最も大きな差を示したのは、「自分の下着と父の下着」であった。このような許容度の差を従属変数として、性別、親の養育態度、接触経験を考慮して分析した。洗濯ものの混合の許容度と親子関係指標の間に有意な相関を示していた。様々な組み合わせの中で「父の肌着」が性別、親子関係・幼時の接触の3つの要因から説明される可能性が示されたことは何らかの特性を示唆している。これに対し、母関連の衣類には主効果、交互作用とも有意ではなかった。このように、衣類の洗濯もの混合という視点から、身体接触、親子関係のある側面が推測できることが示唆された。