表題番号:1997A-368 日付:2002/02/25
研究課題雄ラットにおけるロードーシス抑制神経回路の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 山内 兄人
研究成果概要
雄ラットを去勢し、大量のエストロゲンを投与しても雌型性行動であるロードーシスはほとんど発現しない。雌ラットにも雄ラットにも、中隔と背側縫線核のセロトニン神経によるロードーシス抑制回路が発達しており、その抑制力の違いにより、雄と雌のロードーシスの発現の違いが生じているものと考えられる。本実験ではその抑制機構の性質の違いを明確にするめに雌と雄ラットの脳に直接エストロゲンを投与しロードーシスの発現を調べた。
 麻酔下で雌ラットの卵巣を除去し、中隔または背側縫線核にステンレスガイドチューブを設置する。2週間後、閾値下のエストロゲンを注射し、インナーチューブにエストロゲンかコレステロールをいれ挿入し、ロードーシスの強さをみた。その結果、中隔にエストロゲンをいれるとロードーシスの発現が見られたが、背側縫線核にエストロゲンをいれても生じなかった。コレステロールではどちらの部位ににいれても全く影響がなかった。従って、中隔の抑制力はエストロゲンが直接作用して解除されるが、背側縫線核の抑制機構は直接作用をうけないものと考えられる。次に、雄ラットを去勢し同様の実験を行なった結果、雌ラットとは異なり、中隔にエストロゲンをいれてもロードーシスは生じなかった。
 これらの結果より、雄ラットが雌の性行動であるロードーシスをしないのは、中隔にエストロゲンにより解除できないほど強い抑制回路が形成されるためであることが明かとなった。
研究成果の発表
Lordosis in male rats: Effect of dorsal raphe nucleus cuts. Horm. Behav. 32 (1), 60-67,1997
Kakeyama, M. and Yamanouchi, K.
Facilitatory effect of ventral cut of dorsal raphe nuclues on lordosis in female rats.
Endocrine J. 44 (4) 589-593,1997
Kakeyama, M., Negishi, M. and Yamanouchi, K.
Inhibitory effect of progesterone on lordosis in male and female rats with septal lesions.
In 'Advances in Comparative Endocrinology 2
Kawashima, S. and Kikuyama, S.(eds) Monduzzi/Bologna, pp. 1759-1763, 1997.
Satou, M. and Yamanouchi, K.