表題番号:1997A-363 日付:2002/02/25
研究課題動物サーカディアンリズムに対するストレス負荷の影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 柴田 重信
研究成果概要
ストレスが蔓延する現代社会では、心身症、うつ病、神経症などストレス性疾患が増大している。これらの疾患には睡眠障害を始めとするリズム性の異常も多い。したがって、本研究はこのようなリズム異常に関わる疾患の発症の原因を探る目的の一つとして、ストレスの光同調に対する影響について調べた。ハムスターを恒暗条件飼育し、フリーランリズムが出現してきたらサーカディアンタイム(CT)(CT12を輪回し行動の開始時刻とする)の13や20に光照射を行った。光照射のみをCT13やCT20行ったハムスターの位相後退や前進はそれぞれ74分と149分であった。拘束ハムスターに光照射すると位相後退も前進もいづれもその大きさが有意に低下した。 以前フットショックストレスを経験したハムスターは対照群に比較してCT13やCT20の光照射によるそれぞれ位相後退や前進が少なかった。フットショックストレスのみを負荷した群(stress)とフットショックストレスも光照射も与えなかった群(control)の視交差上核内FOS免疫陽性細胞数はそれぞれ平均19と21で有り、両群間に全く差は認められなかった。すなわち、フットショックストレスは視交差上核の細胞にFOSを出現させないことがわかった。一方、光照射した群では光照射しない群より、FOS免疫陽性細胞数(45)が有意に増大した。この光照射によるFOS免疫陽性細胞数の増加はフットショックストレスの併用により有意に低下し(19.7)、無処置群やストレスのみの処置群の値に近づいた。
 本研究において、物理的な拘束ストレスでも、また無条件恐怖刺激や条件恐怖刺激といったフットショックストレスでも、光照射によるハムスターの輪回しリズムの位相変化を抑制することが明らかとなった。また、フットショックストレスは光刺激による視交差上核内FOS免疫陽性細胞数の増大を抑制した。光同調時にストレスによるセロトニン神経の活性化が起こり、結果として光同調を低下させたものと考えられる。
発表論文:
柴田重信、光とメラトニン、ファルマシア34、45、1998
池田真行、柴田重信、概日リズムとセロトニン神経系、Molecular Medicine,34,286,1997