表題番号:1997A-360 日付:2002/02/25
研究課題筋分化制御因子としてのアクチビンの役割に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 木村 一郎
研究成果概要
本研究では、筋分化制御因子としてのアクチビンの役割について考察するため、発生段階の異なる筋芽細胞のアクチビンに対する応答性の相違に焦点を合わせ、孵卵3.5、9、11、15日目のニワトリ胚(E3.5、E9、E11、E15)の筋芽細胞および孵化後3日目の幼鶏(PH3)の胸筋由来の衛星細胞の初代培養系を用いて、形態学的、免疫化学的、生化学的に発生段階依存的な感受性の変動について調べた。また、発生の初期から異なる細胞系譜をたどることが知られている胸筋と後肢大腿筋の筋芽細胞についても、アクチビンに対する感受性を調べ比較した。さらに、比較検討のため他の筋分化制御因子についても同様に調べた。
 その結果、アクチビンの筋分化抑制作用については、進んだ発生段階の細胞ほど、その感受性が低くなることが示唆された。特に、E3.5体節由来の筋芽細胞は著しく高い感受性を示した。また、同じ発生段階由来の筋芽細胞では、大腿筋よりも胸筋の方がアクチビンに対する感受性が高いことが示唆された。また、その結果は胸筋由来の筋芽細胞よりも大腿筋由来の筋芽細胞の方が、発生段階依存的な変化が先行している可能性を示唆するものであった。これらの結果はアクチビンが筋発生、特にその初期過程において重要な役割を果たしていることを推察させた。
 FGFについては、進んだ発生段階の筋芽細胞ほど分化が抑制されることが示され、FGFの作用に対して強い感受性を示す細胞ほど、分裂周期から抜け出すことができず、分化相へのコミットメントが遅れ、結果として筋分化が抑えられることが確認された。
 トランスフェリン(Tf)については、胸筋由来の筋芽細胞ではE9からE15のもので、大腿筋由来の筋芽細胞ではE9からE11のもので、発生段階が進むにつれて感受性は高くなることが確認され、また発生初期段階の筋芽細胞においては外因性のTfの存在は生存・増殖・分化に必須であるが、PH3胸筋衛星細胞およびE15大腿筋筋芽細胞では、Tfを与えなくてもかなりの筋管が形成されることが示された。