表題番号:1997A-356 日付:2002/02/25
研究課題東欧農業における生産構造の変化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 弦間 正彦
研究成果概要
東欧においては、複数政党制への転換に伴い1989年以降、市場経済体制への移行を目的として各種の経済改革が実施されてきており、生産・流通構造も大きく変化をとげている。持続可能な経済成長を可能にするためには、生産・流通部門における経済活動の担い手となる近代的経営組織の発展と、それらの活動を保障・支援する新しい制度の確立を含む経済・社会政策の導入が必要視されている。本研究は、農業分野に焦点を絞り、新旧の生産組織の生産構造の変化をミクロデータを分析することにより理解し、その結果をもとに政策分析を行い、政府の役割に関する政策的含意の導入を図るものであった。改革のアプロ-チが急進的と漸進的という具合に対照的であるポ-ランドとハンガリ-について、組織の違いとその組織を取り巻く経済環境の変化の違いを考慮に入れ、生産構造の変化を定量的に比較分析し、農業生産組織の変化内容について理解を図ることが研究の第一目的であった。さらにこの分析結果を踏まえて、移行期経済における農業部門の今後の発展を図る上での政府の役割とその政策手段を明確化することが研究の第二目的であった。
本研究では、以下のことが達成された。
1)ハンガリ-では、改革以前には社会主義部門における生産が中心であったことより、旧国営農場と新・旧協同農場の推移がわかる事例的なデータと、新規に誕生した小農を中心とするデ-タベ-スが構築された。一方、ポーランドでは、歴史的に個人農が多く存在していたことより、小農・近代化した個人農を中心に、民営化された国営農場と協同農場も含むデ-タベ-スが構築された。
2)データ分析により、各種経営指標を使った場合に、上位に位置する農家の特徴が明示化された。個人農の場合には、生産規模の大きな生産組織ほど収益性が高く、固定資本回転率が高いことが確認された。旧国営農場や新・旧協同農場では、経営体制の立て直しが早い段階から実施されている生産組織においてパフォーマンスがよいことが分かった。ただし、旧国営農場や新・旧協同農場を取り巻く経済環境は流動的であり、新規投資に関しても消極的な組織が多く存在することが分かった。
3)総括作業においては、分析により明示化された農業生産組織の生産構造の変化を踏まえ、導入しうる政策について問題検討を行った。生産コストの削減につながるような技術サービスの導入の可能性や価格リスクを低くするような制度の導入について考察がなされた。
研究成果の発表:
学術論文
1998年10月、「東欧における農業生産組織の変容に関する分析」、早稲田大学社会科学研究学会発表論文
1997年7月 Gemma, M. and M. Voros, Environmental Problems and Policies in Hungarian Agriculture, Proceedings of the 11th International Farm Management Congress, International Farm Management Association, Vol. 1, p.397 - p.412(英語)(共著)