表題番号:1997A-354 日付:2004/03/22
研究課題問題解決過程における概念形成のモデル化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 常田 稔
研究成果概要
人間の概念形成に関しては、Johnson-Laird, Finke, 堀らの研究が知られている。
 本研究では、これらの先行研究の成果を踏まえ、人間が問題解決過程においてアイデアの芽をいくつか思いつき、それらを問題解決の代替案として概念形成して行く過程をシナジェティックス理論に基づく非線形連立微分方程式で表現してシミュレートするためのモデルを構築し、その解析結果と学生を対象とする実験結果を比較することによって調べた。
 特に、n個のアイデアの芽が2個の代替案に収束していく過程は、ある種の条件下では、モデル上2元2次の特殊な形をとる非線形連立微分方程式に帰結させることができるが、この場合の解の振る舞いはほぼ完全に把握することができた。
 n個のアイデアがm個の代替案に収束していく過程は、モデル上一般に複雑であるが、様々な条件を仮定して多くのパラメータのもとにパソコンでシミュレーションすることを試み、解の振る舞いを調べた。その過程で多くの解の特徴を確認することができたが、解の一般的性質として提示できるような結論はまだ得られていない。
 以上の解析結果は、問題解決行動の実験結果と少なくとも矛盾しないことが確認された。
 n個のアイデアが3個(以上)の代替案に収束していく場合、パラメータの組み合わせによっては、解がいわゆるカオスとしての振る舞いを示すことが確認され、そのアトラクタ、リアプノフ指数を求めることができた。しかし、我々の実験においては、モデル上のカオスに対応するような実際の行動上のカオス的現象は観察されなかった。これは、モデルのパラメータに対応する実験場面をうまく構築することができなかったためと思われる。
 多くの課題は残されたが、この研究によって問題解決過程をコンピュータ等によって支援するための支援システム設計のためのいくつかの手掛かりが得られたと言える。
 研究成果については、追々発表していくつもりである。