表題番号:1997A-353 日付:2002/02/25
研究課題ロシア民営企業の賃金管理
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 辻 義昌
研究成果概要
[資料収集の状況]
 賃金動向のデータとして着目していたのは、一般労働者向けの週間求人誌で、Triza が外資系企業のマネージャー・高級秘書に集中しているのに対し、これらは自動車修理工・建築工事の管理者・出版者の営業要員といった普通の労働者の雇用条件を知る上で非常に貴重な情報をもたらすはずであったが、入手は順調にいかなかった。そこで、整理・分析の対象となった資料の大半は国家統計局およびモスクワ市統計局が作成したデータとなった。これらについては、最初から電子化されているものが多々あったが、それらのデータのformatの解析に成功した。
[主要な発見]
今年度における統計的データを入手し、情報をupdateしたということに限ろう。1997年7月のデータでは、所得に占める労働報酬の割合は前年の18%から15%に低下し、外貨販売収入は17%から28%へ増加し、企業家のその他の収入は59%から54%へ低下している。
1. 1993年以降徴税制度が活動を始めるや、脱税行為が一般化し、生産統計・所得統計の両者が「公式申告分」を表すに過ぎなくなった。
2. 企業間取引では、バーター方式による脱税、労働報酬では「業務委託」という脱法行為(労働賃金だと、所得税の他、各種の社会保険金を支払わなくてはならない)が蔓延した。
 しかし、モスクワ市統計局の所得統計(集計値)を世帯生活調査によるデータと付き合わせると、「ヤミ給与が家計では単なる賃金収入とされており、しかもそれほど多くなく、その他の収入は年金を別にするとネグリジブルである」という結論が出てくる。これは社会のごく一部の人々のヤミ収入が統計を歪めているためであると推測される。
[今後の研究課題]
 モスクワの求人誌 Rabota segodnja と Priglashaem na raboty とを恒常的に入手する経路が研究期間の最後になってできたので、これら求人誌に掲載されている求人広告を労働市場の分析に役立つようにするために、どのような方法で加工すべきかを最初に打ち立て、次にその成果を出していきたい。これにより、モスクワ市統計局が集計した労働統計に対する有力な別解釈ができるかもしれない。