表題番号:1997A-351 日付:2002/02/25
研究課題公務における任用および人事管理の弾力化と公務員法制の課題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 清水 敏
研究成果概要
民間企業において、広く導入されつつある能力主義的又は成果主義的人事管理が、実態として公務部門においてどの程度導入されているのか、またそれは公務員法制の諸原則(メリット・システム)や平等主義との関係でどのように位置づけられているのか、これが本研究の基本的なテーマである。したがって、一定の実態調査とそれをふまえた理論研究とを念頭において研究を進めてきた。前者の実態調査については、現時点において7つの地方公共団体の聞き取り調査を行ったが、そのうち5つの公共団体における能力主義的人事管理の実態の概要を把握することができた。導入目的は、従来の昇給・昇格の年功的運用の見直しを通して公務を活性化することに置いている。対象は、管理職に限定しているところが多いが、一部の公共団体では、全ての職員としているところもあり、現在管理職に限定しているところも、近い将来、職員全員を対象にする意向を有している。評価基準は、民間における業績評価の手法に近似している傾向を見てとることができる。このような人事管理制度に対する公務員自身の評価は多様であるが、かかる制度を積極的に評価する人においても、この制度の問題点として評価基準の明確化を課題として挙げている例が多い。この点においても、民間企業における運用上の問題点と共通するものがあった。また、業績評価の結果を本人に開示するところは対象となった公共団体では皆無であったが、開示すべきとの意見も少なくなかった。なお、評価を昇格に反映させるだけでなく、給与にも反映させることは民間企業では稀ではないが、地方公共団体においてこれを実施しているところは、皆無であった。以上の実態は、公務員法の諸原則に照らしてどのように評価すべきか、現在検討中である。同様のテーマで今年度末まで文部省科学研究費の交付を受けているので、本年度も補充調査と理論研究を継続する予定である。
研究成果の発表
1999年1月、「公務における任用の弾力化と公務員法制改革の課題」労働法律旬報1999年1月上旬号