表題番号:1997A-343 日付:2002/02/25
研究課題排水処理に有効な生物膜を対象とした微生物生態系に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 専任講師 常田 聡
研究成果概要
硝化細菌は廃水処理プロセスにおいて大きな役割を果たすが、生物膜内でどのように共存し、また諸環境因子によりそれらの共存形態がどのように変遷するかはほとんど明らかになっていない。本研究では、水温、pH等の変動による水質の変化と好気槽生物膜内における硝化細菌の個体数の関係を追跡すると同時に、生物膜内での生態系(分布特性)を明らかにすることを目的として検討を行った。
 アンモニア硝化能に及ぼす水温の影響に関して調べた結果、水温は硝化の初期、つまり硝化細菌が生物膜を形成する段階において、硝化細菌の増殖至適温度である30℃付近における制御が重要となるが、一定の生物膜が形成されると、水温に対して耐性ができ、硝化能を保持する上では水温の影響は小さくなることがわかった。一方、10℃では生物膜が形成されなかったため硝化活性は極めて低かった。
 硝化能に及ぼすpHの影響に関しては、20℃でpHを7.4に制御した系が、8.5に制御した系や制御しなかった系に比べ、連続実験期間を通して硝化細菌の高い増殖能および硝化活性を示した。また、pHをコントロールしなかった場合のpHは概ね5.0付近であった。これより無機廃水の硝化における至適pHは7.0~8.0付近であり、安定した硝化活性を維持する上で、pHの至適範囲における連続制御の重要性が示唆された。
 接触材に付着した生物膜中の硝化細菌数と温度やpHとの相関性を明らかにするために、抗Nitrosomonas europaeaモノクローナル抗体を用いた迅速定量化手法により担体単位面積あたりのN. europaeaの個体数を測定した。20℃でpHコントロールしなかった系では、7.4にコントロールした系に比べN. europaeaの個体数はほぼ10分の1であった。以上よりpHを7.4にコントロールした場合、生物膜内の硝化細菌を高密度で保持できることが確認された。
発表論文:
1998年1月、野田尚宏、平田彰、常田聡、稲森悠平、第5回生物利用新技術研究シンポジウム論文集、 226-230
生物膜の硝化菌バイオマス量と硝化能との関係