表題番号:1997A-337 日付:2002/02/25
研究課題土砂粒子の運動の解析に基づく河床波の形成機構に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 関根 正人
研究成果概要
本研究では、均一粒径砂礫により構成される平坦河床が、土砂の移動に伴って河床波を伴う河床へと変化していく過程を、個々の土砂粒子の運動の解析を通じて再現し、その機構を明らかにしようとするものである。なお、ここでいう「土砂粒子の運動」とは、河床を構成している粒子が河床から抜け出し、流水中を運動した後、再び河床に停止するまでの一連の動きを指し、粒子の質点系の運動方程式を数値的に解くことでこの運動を追跡しようとするものである。この解析手法の骨格は著者らによって既に確立されている(たとえば、SEKINE and KIKKAWA、 1992)が、これを河床波などの地形が形成される過程の解析に適用しようとした研究はほとんど見られない。ところが、最近のコンピューターの処理能力の向上と、本研究を含む一連の研究により、ようやく地形形成のシミュレーションが可能な段階にきたといえる。
 本研究で得られた主な成果は次の通りである。すなわち、(1) 土砂の移動し易さと河床の凹凸への捕捉のされ難さが河床表層粒子の配列などの幾何学的条件によって異なることによって河床上の微地形は発達・成長を遂げ、小規模の河床波となることがわかった、(2) 一度形成された凹凸は時間とともにその規模を増大させるが、その際に、波は上流方向に遡上しながら複数のより規模の小さな波がひとつにまとめられていくことがわかった。なお、砂漣や砂堆として知られる規模の大きな河床波の発達過程においては、波は下流方向に移動することが知られており、両者の移動方向は正反対である。ここで解析を行った初期河床波が砂漣・砂堆にまで成長し得るのか、その過程のどの段階でなぜ移動方向が変わるのかについては未解明であり、今後の課題としたい。最後に、(3)粒子スケールの運動の追跡を基礎として地形形成過程を解析する一手法を確立することができた。
研究成果の発表:
1997年9月
「土砂粒子の運動の解析に基づく河床波の形成過程に関する研究」、土木学会題2回年次学術講演会概要集、第2部。
1999年投稿予定
「土砂粒子の運動の解析に基づく河床波の形成機構に関する研究(仮題)」、土木学会論文集。