表題番号:1997A-335 日付:2002/02/25
研究課題アクチュエータ集積型宇宙線マイクロセンサの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 庄子 習一
研究成果概要
本研究では人工衛星に搭載される小型軽量の宇宙線検出システムの開発を目標として、X線検出用ボロメータの基礎研究を行なった。従来のボロメータでは熱容量と熱絶縁の問題からセンサの感度に限界があり、個々の入射宇宙線を計測できるセンサの実現は不可能であった。そこで、電気的素子のセンサと機械的素子のアクチュエータの融合により放熱機構を持ったマイクロセンシング機構を開発することを目指した。以下に、本研究で得られた成果を箇条書きで示す。

1.シリコン異方性エッチング技術を検討し、プロセスを工夫することにより、温度センサを持つX線受光部を5μm厚の薄い梁構造で支える熱絶縁された微小構造体の製作技術を確立した。この方法では梁構造の残留応力による歪をほとんど生じないため、熱絶縁構造を必要とする他のマイクロセンサ製作にも有効である。
2.X線センサは絶対零度付近で使用するため、この温度範囲で感度の高い温度センサが不可欠である。このためシリコンにp型不純物を拡散したタイプのSi熱電対を製作し、濃度-感度依存性を測定した。その結果、温度Tの約4乗に比例する出力を発生する高感度な温度センサとなる温度センサが実現できた。
3.個々の入射宇宙線を検出するためには高感度の温度センサを実現するだけではなく、センサ部を定期的に冷却する放熱機構が必要となる。そこで、極低温でも有効に動作するマイクロアクチュエータについて検討したが、低温度での熱伝導など実用上の問題があり、放熱機構の再検討を行なっている。
4.当該マイクロセンサは将来人工衛星に搭載することを目的としており、今後とも宇宙科学研究所のグループと共同で開発を続けて行く予定である。
1998.3.26
電気学会・工藤、庄子、他・電気学会全国大会・宇宙放射線計測用高感度X線マイクロボロメータの開発・3-673・pp221-222