表題番号:1997A-334 日付:2002/02/25
研究課題景観イメージの合意形成のための市民ワークショップの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 後藤 春彦
研究成果概要
本研究は、市民参加型の都市計画をすすめる上において、視覚的な市民の合意形成を目指すための基礎的研究として、小型CCDカメラと街並みのファサード写真のあおりを修正して作成した模型を用いた景観シミュレーションが景観イメージの合意形成手法として有効であることを明らかにすることを目的とするものである。
 はじめに、都市景観模型の特性を把握するため、模型映像と現地映像およびCGを用いて被験者実験を行い、都市景観模型の評価構造が「雰囲気性」「美観性」「粗密性」により説明されることを明らかにした。また、現地映像との評価構造およびCGとの再現性の比較により、都市景観模型が景観シミュレーション手法として十分な再現性を有し、空間全体の「雰囲気」や「美観」を予測、検討するのに有効な評価特性を持つことを明らかにした。
 つぎに、都市景観模型を用いて、高さ、容積、壁面線、形態の4点から景観を検討する市民向けのワークショップを開発、実施した。その結果、都市景観模型とCCDカメラを利用した景観シミュレーションワークショップには合意結果と合意プロセスに一定の関係性がみられた。また、ワークショップの前後に行った参加者に対する景観イメージに関するアンケート調査よりこのワークショップは景観イメージの合意形成手法として有効であることが確認された。
 さらに、このワークショップの汎用性をめざして、都市景観模型をより簡便な街並み起こし絵図に置き換えて前掲同様の実験を行った。起こし絵図とは近世の茶室設計より伝わり、模型と図面の双方の性格を併せもつ表現方法である。これを景観シミュレーションに応用したところ、被験者実験より街並み起こし絵図が景観の「雰囲気」を予測、検討するのに有効な評価特性を持つことが確認された。起こし絵図は素人でも手軽に作成できるもので、市民参加によるワークショップのツールとして有効であることが確認された。