表題番号:1997A-333 日付:2002/02/25
研究課題バイオレメディエーションを目的とした石油分解微生物の探索と能力評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 桐村 光太郎
研究成果概要
海洋や土壌の汚染物質を分解または吸収する機能を有する微生物を利用して自然環境の保全または浄化を行うことが全世界的に検討され始めている。このような生物的環境浄化は病んだ地球を治癒するとの発想から、バイオレメディエーションと称されている。本研究においては、流出原油の微生物処理を目的として、新規な石油分解微生物の探索を行った。
 日本各地の海水、河川水、土壌、備蓄原油等を試料として、ケロシン(灯油)を唯一の炭素源とする集積培養を行い、石油分解能力を示す微生物の一次選択を行った。二次選択では、栄養分を含む寒天培地上に石油を塗布し、一次選択で集積した微生物の培養液を接種して好気および嫌気条件下で培養を行い、微生物集落周辺の石油が消失しているものを選択した。取得した微生物は単離して微生物学的同定を行った。単離した微生物に関しては、ヘキサデカン(炭素数18)の資化性を調べ、石油分解能力の指標とした。以上の微生物探索によって、多種類の微生物が取得され、石油分解能力が高いものとしては、Pseudomonas putida, Pseu domonas sp., Rhodococcus erythropolis, Gordona sp., Enterobacter cloacae, Sphingomonas sp., Bacillus sp.等の細菌が選択された。一方、原油に含まれるカルバゾールは難除去性の有機窒素化合物であり、流出原油事故ののちに環境に残留するため分解除去能力を示す微生物の取得が望まれていた。そこで、カルバゾール分解能力を示す細菌を上記の石油分解微生物群からあらためて選択したところ、Sphingomonas sp. CDH-7が最高の能力を示し、500 mg/lのカルバゾールを含む液体培地で好気的に培養すると3日間で完全にカルバゾールを分解除去することが確認された。また。当該細菌をあらかじめ培養して非増殖状態として、100 g/lの濃度でカルバゾールを逐次添加した場合には、9回目までは完全分解が認められ、カルバゾールはアンモニアにまで無機化された。このような性質は実際の流出原油の処理に極めて有用と考えられる。
研究成果の発表:1997年9月、桐村光太郎、他、原油中に含まれる難除去性芳香族窒
素化合物のSphingomonas sp.による選択的分解、平成9年度日本生物工学会大会講演要旨集、p. 254.