表題番号:1997A-331 日付:2002/02/25
研究課題射影多様体の代数幾何的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 楫 元
研究成果概要
今年度は射影多様体の secant variety に関する研究を行った。特に射影多様体が随伴多様体 (すなわち、複素単純代数群の随伴表現から得られる等質射影多様体)の場合を中心に研究した。
 この場合、代数群の射影空間への作用は線型であることから直ちに、secant varietyも同じ代数群の作用を許すことがわかる。では、どのような軌道からsecant varietyが構成されているかが自然に問題となる。随伴多様体自身は明らかにその軌道のひとつである。昨年度は、secant variety の中で稠密となる軌道について明らかにした。今年度はそれら以外にも第3の軌道が存在することを、symplectic triple systems の理論 (浅野 洋氏; 横浜市立大学) を使うことにより示すことに成功した。
 secant vareity の一般の点に対して、 その点を通る随伴多様体の射影空間に埋め込まれた接空間を考える。 その接点の全体のなす集合は随伴多様体の射影幾何学という立場からすると非常に興味深いが、今年度はその集合についての Lie 環論的特徴づけを発見した。 そこでは、 Lie 環に接触型次数構造を考えることが本質的であることがわかった。
 以上の結果の証明において、 ある等質空間を考えることが重要となる。 その空間は、 H. Freudenthal のsymplectic geometry に対応する:因みに、 ここで中心に考えている随伴多様体は彼の meta-symplectic geometry に対応し、一方、secant varietyの著しく退化した射影多様体のクラスとして現れる Severi 多様体は彼の projective geometry に対応している。今年度は、その等質空間と随伴多様体との関連を明らかにした。実は、随伴多様体の、ある線型部分空間による断面としてその等質空間が現れることがわかった。
 以上は、福井大学工学部、保倉理美氏との共同研究の成果であり、現在論文にまとめている最中である。
研究成果の発表:
1. Adjoint varieties and their secant varieties, Indag. Math. (to appear)
2. Secant varieties of adjoint varieties, MatemÁ tica Contempor nea (to appear)
3. Homogeneous projective varieties with degenerate secants, Trans. Amer. Math. Soc. (to appear)