表題番号:1997A-330 日付:2002/02/25
研究課題非線形放物型方程式系および関連する楕円形方程式系の解集合の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 山田 義雄
研究成果概要
上記課題のもと、[1]反応項をもつ退化放物型方程式の定常解集合の構造と安定性の解析、[2]協力系と呼ばれる反応拡散方程式系の共存解に関する研究を行った。
[1] 通常の線形拡散項と反応項からなる放物型方程式の解の基本的性質や定常問題の解集合の構造については、Chafee-Infante問題としてきわめて詳細に解析されている。それでは、線形拡散項を退化型非線形拡散項のp-ラプラシアンで置き換えたとき、解集合の構造や解のプロフィールにいかなる影響がもたらされるだろうか?空間1次元の場合に限定されるが、線形拡散のケースと比較して興味ある相違がみられた。ひとつは、拡散項と反応項の次数の違いに応じて定常解の集合の分岐構造が大きく異なることである。もうひとつは、退化性により定常解の中にはフラットな形(フラット・ハット)を持つものが現れることである。このため解集合は離散的ではなくなり、比較定理による定常解の安定性の証明もある部分では困難になる。更にフラット・ハットの時間的な変化を知ることも今後の重要な課題となる。
[2] 協力系と呼ばれる半線形拡散方程式系について、3成分の未知関数から成る場合を調べた。このような問題は数理生態学や化学反応などの分野にあらわれる。とくに、興味があるのは、正値定常解(共存解)であり、いかなる条件下で共存解が現れるか?その個数や安定性はどうか?などの問題が解析の対象となる。線形化方程式に対する強最大値原理を利用して、私達のグループは共存解が存在するための必要十分条件を求め、同時に共存解の一意性と大域的安定性を示すことができた。
研究成果の発表
1997年7月
Coexistence states for some population models with nonlinear cross-diffusion, Forma, Vol.12, 153-166.
1997年9月
Asymptotic properties of a reaction-diffusion equation with degenerate p-Laplacian, Technical Report No. 97-11, Waseda Univ.