表題番号：1997A-325 日付：2002/02/25
研究課題Pecora-Carrol カオス同期とその応用可能性の検討に関する研究
研究者所属（当時） 資格 氏名
（代表者） 理工学部 教授 松本　隆
研究成果概要
1. R-L-Diode 回路はその単純さにもかかわらず、豊かな分岐現象( 周期倍分岐、saddle-node 分岐、intermittency, crisis, chaos 等 ) が観測される。我々の様な工学の分野だけでなく物理学の研究者達もこの回路を研究している理由の一つはこの系には人工的 ( artificial) な部分が全くない自然な系だからと思われる。　Pecora-Carrol カオス同期と関連してchaotic masking というパラダイムが提案されている [Cosmo and Oppenheim, Phys. Rev. Lett. 1993]。これはカオス的ふるまいを示す系の状態変数で、情報信号（例えば音声）をおおってしまい（masking）それを通信系を通して送り、受信側で適当な同期系を構成してもとの情報信号を復元しようとするものである。本研究で検討しているR-L-Diode 回路で情報信号を音楽として実験を行い、復号可能性を昨年度確認したが、それに附随して新しいopen problemが二つ発生した：(i)“復号”された信号はもとの情報信号（音楽）の振巾の約７０倍となり、カオス同期系に増巾メカニズムが組み込まれている事がわかった。が、何故増巾が起こるかは未解決である。(ii) masking schemeが何故働くかも未解決である。2. 第一年度に得たカオス同期の理論的正当性は、R-L-Diode回路に特化したものであったが、より広いクラスの一般的非線形ダイナミカルシステムへも適用可能である事を示した。
研究成果の発表
[1] 「電子回路に見るカオス、分岐、同期」, 電子情報通信学会、電子デバイス研究会、電子情報通信学会技術報告、 ED-96-216, pp. 1 - 8,March 14, 1997，著者：松本　隆、西　正信
[2] 「RーLーDiode　回路におけるPecora-Carrol 同期回路の単純化」、１９９７年電子情報通信学会総合大会、A-2-46, pp.103, March, 1997，著者：浜野英知、西　正信、松本　隆
[3] “R-L-Diode 回路におけるTopological Horseshoe： A Computer Assisted Proof Topological Horseshe in the R-L-Diode circuit”, 電気学会研究会、情報処理研究会、IP-97-13, p.1 - 10, Sept. 1997，著者：竹内規晃、松本　隆
[4] 「R-L-Diode回路におけるTopological Horseshoe： Computer Assisted Proof」, 1997年電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティ大会,A-2-1, p.29, Sept. 1997，著者：竹内規晃、松本　隆
[5] 「R-L-Diode回路のPecora-Carroll カオス同期とマスキング」、電子情報通信学会論文誌A, vol. J80-A, No. 9, pp. 1421-1430, Sept. 1997，著者：西　正信、松本　隆
[6] 「R-L-Diode回路のPecora-Carroll カオス同期とマスキング」、１９９７年電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティ大会、A-2-2,p.30, Sept. 1997，著者：西　正信、松本　隆
[7] “Chaos, Synchronization and Bifurcations in a Driven R-L-Diode Circuit”, Proc. IUTAM Chaos '97, Kluwer-Acedemic
著者：西　正信、松本　隆
[8] 「非線形ダイナミカルシステムの部分システム単調性とカオス同期」、電子情報通信学会技術研究報告、vol.97, No.530, NLP-139, pp.25-32, Feb.1998，著者：西　正信、松本　隆　
[9] 「非線形ダイナミカルシステムの部分システム単調性とカオス同期」、電子情報通信学会誌A, to appear
著者：西　正信、浜野英知、松本　隆
[10] 「R-L-Diode回路におけるTopological Horseshoeについて」、電子情報通信学会誌A, to appear
著者：竹内規晃、永井立紀、松本　隆
[11] “Subsystem Decreasing for Exponential Synchronization of Chaotic Systems”, Physical Review E, to appear，著者：T. Matsumoto, M. Nishi