表題番号:1997A-324 日付:2004/11/07
研究課題超ひも理論と時空の特異点
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 前田 恵一
研究成果概要
 ビッグバン宇宙論によると宇宙の始まりは特異点ということになり、そこでは一般相対論は何らかの変更が余儀なくされる。インフレーション宇宙論は、宇宙初期の標準モデルになりつつあるが、特異点問題は解決されない。量子宇宙論がその可能性として考えられるが、もう一つの鍵として素粒子の統一理論がある。統一理論としては、超ひも理論がもっとも有望ではあるが、その宇宙論的応用はまだ十分なものとはいえない。一方、ブラックホールにおいても、ホーキングが1973年にブラックホールの量子論的蒸発を示したが、その最終状態に関してはまだよくわかっていない。そこで、我々は、超ひも理論を基礎にした宇宙初期やブラックホールにおける特異点の振舞いに関し系統的な研究を行った。
 超ひも理論では、高エネルギー極限で、通常のアインシュタイン理論とは異なる新しい量子的な効果として曲率高次の項が現れることが予想されている。そこで、我々はまず曲率2次の項として期待されるGauss-Bonnet 項が付加された場合の影響についてブラックホール及び初期宇宙論について特に特異点出現の観点から考察した。また、統一理論で現れるYang-Mills 場(非可換ゲージ場)を伴うブラックホールについても詳細に解析した。さらに宇宙項やディラトン(系に普遍的に現れるスカラー場)の影響についても考察を行った。その結果、これらの効果は必ずしも特異点回避には十分ではなく、特異点のタイプを変更するにとどまることを明らかにした。場の理論的取り扱いを超えたひも理論的な取り扱いの必要性を示唆している。