表題番号:1997A-320 日付:2002/02/25
研究課題回転給油を考慮したクランクピン滑り軸受の実験的および理論的性能解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 林 洋次
研究成果概要
近年、エンジンの滑り軸受に対して、エンジンから排出される環境汚染物質低減のための潤滑油消費量削減や摩擦特性の改善による省エネルギーなどの緊急課題が課せられている。本研究で取り上げるクランクピン滑り軸受は、動荷重下で使用されしかも揺動回転運動する軸の内部から給油されるという独特の機構を有しており、その潤滑メカニズムは未だ十分には解明されていない。そこで、実験的研究では、まず、極めて高精度で軸受緒性能を計測することができるクランクピン滑り軸受試験機を開発試作した。クランクピンとコネクティングロッド大端部の相対運動を分析した結果、一定回転運動に揺動運動を付加する必要があることから、4リンク機構による揺動部分に一定回転する直流モータを装着することによって、軸を揺動回転させる駆動機構を採用し、この揺動回転軸の内部から軸受隙間に供給する給油装置を試作した。これらの揺動部分および一定回転部分のそれぞれの部分にフォトトランジスタを設置し、その同期信号を用いて電磁加振機をコンピュータで制御することによって実際の燃焼ガス力を加えることに成功した。本試験機を用いて、揺動運動、回転運動、燃焼ガス力などがクランクピン滑り軸受の軸心軌跡に及ぼす影響を実験的に明らかにした。理論的研究では、動荷重下で使用されかつ揺動回転運動を行うエンジンの滑り軸受に対する一般的な一連の基礎方程式を誘導した。コネクティングロッドを介してエンジンの滑り軸受の油膜に作用する燃焼ガス力や慣性力や軸受隙間内の油膜に発生する圧力を検討して、動荷重下の滑り軸受の潤滑特性を求める潤滑方程式を解析する際の油膜破断を考慮した境界条件を考案した。運動方程式と潤滑方程式を初期値境界値問題としてコンピュータで数値解析して、軸心軌跡などの軸受性能を求め、これらの理論解析結果と前述の実験結果を比較検討した。
研究成果の発表
1997年10月 (社)日本設計工学会・日本設計工学会講演論文集第97号・クランクピン滑り軸受試験機の設計